第1章:退屈な正月の終わりと、妻の「CX-60を試乗してみたら?」
2026年1月4日、快晴、風もなく穏やかな正月連休最後の日曜日でした。妻と
「退屈な正月休みも今日で終わりだね」
そんな会話を交わしながら、私はマツダ・ロードスター(ND)のハンドルを握っていた。
私の頭の中は、年末からずっとある一台の車のことで一杯だった。それはマツダ「CX-60」。スマホを開けば中古車サイトを巡回する日々。2022年に発売されたCX-60だが、鬼のようなリコール続きでオーナーが嫌気をさして2023年度登録車が続々と中古車市場に出回り始めていた。(実際は残クレ3年で手放したのかも?)
隠していたつもりだったが、隣に座る妻にはすべてお見通しだったらしい。妻が
「CX-60を試乗してみたら?」
不意に投げかけられたその言葉は、私にとって願ったり叶ったりだった。(実はタイミングを見て、実車を試乗して見積もりしてもらおうと密かに考えていたのだ)
第2章:マツダの「愚直さ」が好きだ
私とロードスターの付き合いは長い。2012年6月に20万円で足立区の修理工場で買ったNBロードスター1.8VSモデル(総修理費は約70万円)。ブリティッシュグリーンにタン色の幌だ。帰りの都内の道路でラジエターから液漏れするほどボロボロだった。その後、窓ガラス(運転席、助手席)が落ちて上がらなくなったため、自分でドアパネルを剥がしてウインドウレギュレーターを交換したり、助手席側のサイドシルが錆びて穴が空いたので、斉藤板金で修理してもらったりとトラブルには事欠くことはなかった。

2015年に4代目のND型ロードスターが発売され、ずーっと我慢していた。役職がついて給料アップしたので2018年にND型の購入に踏み切った。ボロボロのNB型(直前に前後4本のショックを新品に交換していた)を5万円で下取ってくれると言うのだ。少しでも購入費用が安く済むのならと言う気持ちもあった。後で聞いた話だが、店舗で下取りできないからサービススタッフが自腹で買ってくれたそうだ。ありがたやまだ。ロードスターは沢山のファンに愛されているのだ。

「原点回帰」を掲げた設計者の執念、ひらりひらりの操縦感や車重990キロ!そして、匠塗技術の結晶である「ソウルレッドプレミアムメタリック」、ハイライトは鮮やかに、影は深く沈み込むあの赤。購入して8年が経った。走行距離は7万5千キロだ。
「そろそろ、このNDも手放し時なのだろうか」
そんな迷いの中、2025年に大幅改良を遂げたCX-60の噂だった。沢山の不具合が直ったようだ。発売当初こそ厳しい評価も受けたが、マツダは決して諦めなかった。なぜならこれからマツダを成長させるためのラージ商品群の一番最初のモデルだからね。諦めない石にしがみついてでもの事例は沢山ある。ひとつをあげるとドイツ勢が諦めたロータリーエンジン、磨き上げ、ル・マンで頂点(4ローターで!)を極めたあの時のように。
また世界最大のトヨタですら直列6気筒のGRスープラの製造を断念する時代に、あえて「直列6気筒ディーゼルエンジン・後輪駆動(FR)」という時代に逆行するようなラージSUVを世に送り出した。俗に言う逆張りだ。この「愚直さ」こそがマツダだの真骨頂なんだ。私はそれが好きなんだ。
「還暦を迎えた自分にとって、直6を味わうラストチャンスかもしれない」きっとそうだ。
第3章:マジか!! お世話になっている店舗がお休み!?
「まずはいつもの店舗(旧ユーノス)へ行ってみよう」
妻の言葉に背中を押され、ハンドルを握る手に力が入る。バイパスを左折し、なじみの旧ユーノス店舗へ。しかし、目に飛び込んできたのは、無情にも消灯されたショールームだった。
「……まだ正月休みだったか!!」
膨らんでいた期待が、一気にしぼんでいく。オープンから見上げる青空がやけに眩しい。
落胆する私に、妻がさらなる提案をくれた。
「あっちの『◯◯マツダ』なら開いているみたいよ」
向かった先は、レクサスを彷彿とさせる洗練された新店舗だった。
駐車場に入るとスタッフが満面の笑みで迎えてくれる。意を決して
「CX-60を試乗したい」
と伝えたが、お目当ての3.3リッターディーゼルエンジン車がないというのだ。えーーーっ、マジか!
「CX-80のディーゼルに乗ってみませんか?」
営業担当の提案は、思わぬ転機となった。CX-80とCX-60、それでもいいから試乗して、実車を体感してみたかった。
第4章:3.3リッター直列6気筒ディーゼルエンジンが教えてくれたこと
まずは比較のため、CX-60の2.5リッターガソリン車を走らせる。ロジウムホワイトの車体は美しく、内装のグレージュ本革も素晴らしい。しかし、走りの印象は「普通」に留まった。イマイチ。
次に、本命の直6ディーゼルを積んだ「CX-80」に乗り換える。色はマシーングレープレミアムメタリック。冬の柔らかな陽光を浴びたボディの陰影が、筋肉質な造形を際立たせる。試乗コースの長い坂道で、アクセルを深く踏み込んだ。

「グゥおーーーーん……! これだ!」
力強いエンジン音とともに、2トン近い巨体がグイグイと加速していく。CX-80でこれなら、より軽量な1.8トンのCX-60ならどれほど刺激的か!

第5章:130万円の衝撃と「臨時家族会議」
店舗に戻ると、商談は怒涛の勢いで進んだ。提示されたNDロードスターの下取り価格は「130万円」。以前の旧ユーノス店舗では120万円(2年前の時点で)、その査定より10万円も高い。さらに
「初売りですから、今日決めていただけるなら……」
と、営業担当の熱が伝わってくる。(本気で攻めてきた)試乗だけのつもりが、気づけば「あけおめ初売り」の大きな渦に飲み込まれていた。私は営業担当に席を外してもらい、妻との「緊急家族会議」を開いた。どうしよう、GOしよう!
「下取りが高いうちに、CX-60を買ってみたら?」
妻のその一言が、最後の一押しとなった。決まり。戻ってきた見積書には、さらなる驚きが待っていた。下取り価格は153万円まで跳ね上がり、オプション値引きも限界まで詰められている。
私と妻は顔を見合わせ、財布にある限りの万札をかき集めて手付金として渡した。よらしくねと。マツダがその情熱を注ぎ込んだ「直列6気筒ディーゼルエンジン」の鼓動を、自分のものにできる。(つづく)

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